「コロニアル様式」と「徒然草」から観る”燥度”。

令和8年5月23日(土)に医療検査などを手掛ける㈱Sysmexが主催する「みなと異人館一般公開」が行われました。


コロニアル様式

桂離宮のような日本古来の建築も、コルビュジェのような近代建築も偏ることなく楽しんでおります。
神戸では旧居留地など、欧米の明治からの建築に接する機会も多いですが、この夏に特別な機会に恵まれました。

みなと異人館一般公開(令和8年5月)

第一印象は“風通しが良さそう”です。テラスからのポートアイランドの風も期待していきました。異人館のこの様なスタイルを「コロニアル様式」と言うようです。

【コロニアル様式】
コロニアル(colonial)とは、「植民地」という意味。
ヨーロッパの国々が北米や南米という植民地に、建築してきたスタイル。アジアにもこのスタイルによって築かれていきます。
世界各地の植民地を想像すると、高温多湿な地域が多いのと、各地の気候風土の対策がしっかりされてきたんだと想像できます。

建築様式を調べてみると、最初に感じた”風通しが良さそう”と感じるに至る、合理的な理由に合点がいきました。

みなと異人館一般公開(令和8年5月)
みなと異人館一般公開(令和8年5月)

この日は曇り空でしたが、徐々に暑さも増してきています。
暑さと住宅とを考える時に、いつも思い出す”一節”があります。


徒然草

京都大学デジタルアーカイブ『徒然草』(一部:五十五段を白黒に変更)

家の作りやうは、夏をむねとすべし」(徒然草)です。

徒然草』 -第55段―(現代語訳)
住まいの建築は、夏に適するように作るがよい。
冬は、住もうと思えばどこにでも住める。
猛暑に不適切な住宅は我慢ならない。
庭に深い川を流すのは、涼しそうではない。
浅く流れているほうが、遥かに涼しく感じる。
小さい物を鑑賞する時は、吊すと影ができる窓よりも、引き戸の方が明るくて良い。 
部屋の天井を高くすると、冬は寒く、照明も暗くなる。
間取りは、特に必要ない所を造っておけば、空間を楽しめるし、
何かの役に立つ事があるかも知れないと、人々が評しあっていた。
(原文は下記)

楠堂蔵書『徒然草』

気候に対する対策を考えた場合に、両極の夏と冬を比べると、
暖房に関しては、プラスしていく対策で、冬対策の方が容易といえるかもしれません。
夏は、全てを脱ぎ捨てる以上に、薄着になることができない限界が想像できます。

□□

夏の二つの敵といえるのが、①「暑さ(暑邪)」②「湿度(湿邪)」です。

① 暑邪による「耗気傷津(気と津液を損なう)」は、
「眩暈」「 頭痛」「 吐き気」「 倦怠感」「 意識障害」等の症状を出す、熱中症へと繋がる可能性があります。

② 湿邪による「湿困脾胃(湿で脾胃が機能低下)」は、
「頭重感」「 胸苦しさ」「 吐き気」「下痢」 「腹部膨満」等の、季節病として不調を感じられる方々も、居られるのではないでしょうか。

では、この厄介者にどう立ち向かうか?
私はここで「燥度」という視点を提案したいです。

中医学で、暑さは「暑邪」・湿度は「湿邪」として
病気にさせる外からの影響として、”外感病因”といわれます。
外感病因には六淫あり、
「風邪」「寒邪」「暑邪」「湿邪」「燥邪」「火邪」とされます。
六淫については別の機会に。

□□

夏の暑さ・湿度対策は準備が足りても、越えてくる辛さがありますが、
世界中の歴上や文化から学べる事がきっとあるように思います。

観ることができた「コロニアル様式」や思い出した「徒然草」より、
夏の始まりを感じさせて頂きました。


燥度

以前に奈良県宇陀市にある「藤沢薬品」の創業者:藤澤友吉の生家に訪れた際、玄関に入った瞬間の室温の違いに感動したのを思い出しました。
これぞ、日本家屋における自然素材の精巧さかと感嘆です。

宇陀市「藤沢薬品」創業の藤澤友吉の生家(令和元年9月)
宇陀市「藤沢薬品」創業の藤澤友吉の生家(令和元年9月)

夏は不快指数の代名詞の「湿度」、冬はウィルス対策の「湿度」と、
一年中、飽和水蒸気量に右往左往させられますが、
”湿度”よりも、乾燥の度合いという意味で”燥度”と言う単語を考えてみました。
ジメジメに目を向けるのではなく、いかにカラッと快適に過ごすかという、前向きな引き算の考え方です。
ややポジティブに感じられないでしょうか。。

湿度という厄介者に対して、”上段の構え”のように思えます。

この院内の空調に気をつけておりますが、一つは”燥度”。
患者さんが被った「暑邪」「湿邪」を明確にして、少しでも邪を抜けるように精進してまいります。

この時期の養生など、ご質問があれば来院の際にでもお尋ね下さい。

みなと異人館一般公開(令和8年5月)

【参考文献】
京都大学所蔵『徒然草(刊・寛文12年)』京都大学デジタルアーカイブ
・『徒然草』
・『新版 東洋医学概論』
・『中医病因病気学』
・『中医弁証学』

徒然草 -第55段―(原文)
家の作りやうは、夏をむねとすべし。
冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。
深き水は、涼しげなし。浅くて流れたる、遥かに涼し。
細かなる物を見るに、遣戸は、蔀の間よりも明し。
天井の高きは、冬寒く、燈暗し。
造作は、用なき所を作りたる、
見るも面白く、万の用にも立ちてよしとぞ、人の定め合ひ侍りし。

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